~「一房」に込める、未来と情熱~
いま、マスカットに挑戦するということ
マスカット・オブ・アレキサンドリア。
その名に“気品”を宿すこの果実は、ひと房手に取るだけで、見る人の心を惹きつける力を持っています。
その繊細で芳醇な香り、輝くような果皮、口にした瞬間に広がる深みある甘みは、まさに自然がくれた芸術品。
だからこそ、あえてこの果実に挑戦しようとするあなたの勇気と覚悟に、まずは最大限の敬意を贈りたいと思います。
なぜなら、マスカット栽培とは、ただ実を成らせるだけの作業ではないからです。
それは「自然」と「人」との対話であり、「美しさ」を極める旅であり、「情熱」を絶やさない試練でもあります。
それでもこの世界に飛び込もうとするあなたの想いは、きっと誰かの心を動かす果実を育てることにつながる。
私たちはそう信じています。
美味しさ以上に、“誠実さ”が実を結ぶ
OGINO VINEYARDでも、マスカット栽培のすべてが順風満帆だったわけではありません。
試行錯誤の連続。
摘粒のタイミングを一日でも誤れば形が崩れ、収穫期に迷えば甘さが足りなくなる。
ハウス内の温度管理、土の水分量、枝の伸ばし方、房の整え方…。
全てが一本の“作品”として完成するには、果てしない「気配り」と「手入れ」が必要です。
でも、不思議なことに——
その手間と向き合うほど、ブドウは応えてくれるようになるのです。
誠実さは、果実に現れる。
それはOGINO VINEYARDが、この仕事を通して学んだ最も大きな真実です。
だから、栽培経験が浅くても構いません。
「誰かに喜ばれるマスカットを作りたい」という気持ちを持ち続けることが、何よりの“原動力”になります。
道なき道を切り拓く、挑戦者という存在
あなたがこの道を選んだ背景には、きっと理由があると思います。
「地域の耕作放棄地を活かしたい」
「家族に誇れる仕事をしたい」
「自然と共に生きる道を選びたい」
「食べた人の記憶に残る味を作りたい」
そのどれもが、あなたにしかない物語であり、これから育てていくマスカットの“個性”になります。
農業とは「モノづくり」であり「ヒトづくり」です。
そして今の時代、その背景にあるストーリーこそが、果実に価値を与えると私たちは感じています。
OGINO VINEYARDがブランドとして掲げる「PIEMO VERITA(ピエモヴェリータ)」は、
“誠実さの中にしか、本当の美しさは宿らない”という想いから生まれました。
だから、あなたが今まさに感じている迷いや苦労、不安さえも、いつか誰かの共感となり、応援となり、繋がりとなるでしょう。
応援してくれる人は、想像以上にいる
一人での農業は孤独に感じることもあります。
自然相手の仕事は、思い通りにいかないことばかり。
それでも、あなたが向き合う姿を見て、少しずつ、確かに、共感してくれる人たちが現れます。
消費者は、作物だけを買うのではなく、あなたの物語に共鳴して応援してくれます。
地域の人々も、あなたの挑戦に誇りを持ち、いつか手を差し伸べてくれる日がきます。
そして、同じく挑戦を続ける全国の生産者仲間も、あなたの頑張りを見て、自分を奮い立たせています。
あなたは、すでに「誰かの希望」になっているかもしれないのです。
未来を育てるという、もう一つの意味
マスカット栽培の面白さは、季節をまたぎ、樹とともに“未来を育てる”感覚にあります。
1年で結果が出なくても、2年後、3年後には必ず光が見えてくる。
ひと房ひと房に積み上げた経験が、やがて確かな“自信”へと変わります。
ブドウの樹も、人も、一朝一夕では成熟しません。
だからこそ、この果実づくりは人生に重なるのです。
どんなに不器用でも、愚直に手を動かし、気候と対話し、誠実に向き合い続ける人にだけ、マスカットは心を開いてくれる。
それは、あなた自身が、未来を育てる存在であるという証でもあります。
最後に——この道を選んだあなたへ
たとえ誰にも気づかれなくても、
収穫前の早朝、ハウスで一人、光に透ける房を見上げて思うはずです。
「この一房を、誰かに贈りたい」と。
その気持ちがある限り、あなたのマスカットは必ず誰かの心を打ちます。
それが、どれほど尊く、かけがえのない仕事であるかを、私たちは知っています。
だから、あらためて。
マスカットに挑むあなたを、心から応援しています。
あなたの挑戦が、誰かの希望になりますように。