マスカット栽培は、繊細な手間と根気を要する作業の連続です。しかし、だからこそこの道に挑み、歩み続ける生産者には、他にはない覚悟と誇りがあります。本記事では、OGINO VINEYARDが実践するマスカット栽培の裏側と、彼らが「続ける理由」に迫ります。農業が転換期を迎える今だからこそ、生産者として何を守り、何に挑むのか──その姿勢から多くの学びを得られるはずです。
「難しさ」と向き合うマインドセット
マスカット、とりわけシャインマスカットの栽培は、温度管理・湿度管理・摘粒・袋がけなど、年間を通じて高度な技術と絶え間ない観察力が求められます。収穫までの工程には、多くの「手間」が存在し、それらを丁寧に積み重ねてこそ、美しく甘い一房が実ります。
OGINO VINEYARDの荻野さんも、栽培当初は数々の壁に直面しました。裂果や病気による被害、天候不良での収量減少など、どんなに丹精込めても報われないこともある。けれど彼はこう語ります。
「どんな年でも、自分が目指す味と姿に向けて向き合うこと。それがプロであり、この果実を愛する者の責任だと思っています」
この言葉には、生産者としての覚悟だけでなく、挑戦を恐れない姿勢がにじみ出ています。
「おいしさ」の先にある想い
ただ甘いだけではない。口にした瞬間に広がる香り、皮ごと噛んだときのパリッとした食感、その余韻にまで気を配る。OGINO VINEYARDのマスカットが高く評価される理由は、単なる味の追求ではありません。
彼らが届けたいのは、「記憶に残る果実」。誰かの特別な日に選ばれ、笑顔と共にテーブルを彩るマスカットでありたいと願っています。その思いは、ブランディングにも現れています。
「ピエモヴェリータ(PIEMO VERITA)」という名前には、“真実を運ぶ足”という意味が込められています。生産者の誠実な手仕事と、自然の恩恵から生まれる“本物”を、正しく届けたい。その信念が、一房一房に宿っています。
「続ける理由」は、変わる社会のなかで
農業は今、時代の大きな転換点にあります。気候変動による栽培環境の不安定さ、資材価格の高騰、労働力不足──従来の延長線上にはない課題が次々と襲ってきます。
それでもOGINO VINEYARDは、マスカット栽培を「続ける」と言います。その背景には、“農業の新しいあり方”を体現しようという強い意志があります。
たとえば、消費者とのダイレクトなコミュニケーションを重視したSNS運用や、ストーリー性を込めたギフトパッケージの展開。さらに、地域の若手農業者と共に学び合う取り組みも積極的に行っています。
農業が“地元の仕事”から、“選ばれるライフスタイル”になるように。その想いが、OGINO VINEYARDのすべての活動に貫かれています。
未来を見据えた挑戦
今後の目標としてOGINO VINEYARDが掲げるのは、「一房で語れるマスカットづくり」です。つまり、品種や栽培法を超えて、誰が作ったかがわかる、そんな“個”が立った果実を生み出すこと。
これは単なる味の追求ではなく、生産者の「姿勢」や「物語」を果実の中に凝縮させるという新たな挑戦です。
「僕らがやっているのは、果実を育てることじゃなく、“意味を育てること”かもしれない」
OGINO VINEYARDの言葉には、農業の本質を見つめ直すメッセージが込められています。規模ではない、効率だけでもない。地に根差した生産者の生き方こそが、これからの時代に価値を生み出すと信じているのです。
挑戦し続ける人に、エールを
マスカット栽培に限らず、農業は誰にとっても簡単な道ではありません。しかし、そのぶん“報われる瞬間”もまた深く、強く、心を揺さぶるものです。
この記事を読んでいるあなたが、もしこれからマスカット栽培に挑戦しようとしているなら、ぜひ覚えておいてください。成功とは、すぐに手に入る結果ではなく、「あきらめない」姿勢の先にあるものだと。
OGINO VINEYARDの挑戦は、今日も続いています。そしてそれは、これからマスカット栽培に向かうすべての人にとって、希望の道しるべになるでしょう。