マスカット栽培に挑戦する方にとって、栽培の途中で直面するさまざまなトラブルは避けて通れない道です。しかし、事前に問題を知り、備えることで失敗を大きく減らすことができます。本記事では、実際にマスカット(特にシャインマスカット)を育てる中で発生しやすいトラブルとその解決法を、OGINO VINEYARDの現場経験とともにご紹介します。

1. 発芽不良:春先のスタートでつまずかないために

【トラブル内容】

芽が出ない、もしくは芽の成長が極端に遅い。

【原因】

剪定時期の遅れ

冬季の低温・乾燥の影響

根の状態が悪い

【解決法】

剪定は休眠期(1月〜2月)に確実に行いましょう。

土壌水分を保ちつつ、寒さ対策にマルチングを活用。

苗木の植え付けは根の状態をしっかり確認してから行う。

2. 房づくりの失敗:美しい房をつくるために

【トラブル内容】

粒の間隔が狭い、房が不均一に育つ、粒が割れる。

【原因】

摘粒や摘房のタイミングが遅れる

肥料の過不足

水やりが不適切

【解決法】

摘粒は開花後すぐに行い、粒数を適切に保つ。

窒素肥料の過剰は粒割れの原因になるため、バランスのよい施肥設計が必要。

雨除けハウスや水管理システムを活用し、水分ストレスを避ける。

3. 病害虫の被害:日常管理がカギ

【トラブル内容】

うどんこ病、灰色かび病、コガネムシやハダニの被害など

【原因】

風通しの悪い栽培環境

雨や湿気によるカビの発生

観察不足による初期対応の遅れ

【解決法】

樹形管理を徹底し、日当たりと風通しを確保。

こまめな観察と、必要に応じて有機適合資材や天敵生物の活用。

雨よけ設備やドリップ潅水で湿度管理を。

4. 着色不良・糖度不足:見た目と味の両立を目指す

【トラブル内容】

緑が薄くなる、糖度が乗らない、酸味が強いまま残る。

【原因】

日照不足

収穫時期の見極めミス

過剰な施肥や潅水

【解決法】

夏場の日照管理を徹底(反射シートや樹形で調整)。

糖度計を使って適期を見極める習慣を。

適度なストレスを与える潅水管理で糖度アップを狙う。

5. 剥皮・裂果・脱粒:収穫直前のダメージを防ぐ

【トラブル内容】

粒の皮が剥ける、割れる、落ちるなど

【原因】

急な天候変化(大雨や高温)

着果負担の集中

成熟に伴う果実の膨張

【解決法】

雨よけ資材や風対策設備を整備

摘房と誘引で果実への負担を分散

出荷タイミングを見極めて素早く収穫

トラブルのその先に:経験と挑戦が生む品質

マスカット栽培におけるトラブルは、時に心を折る要因にもなります。しかし、それら一つひとつが生産者としての成長に欠かせない経験となります。OGINO VINEYARDでも、失敗の数だけ解決策を見つけてきました。

“挑戦するからこそ、見える景色がある。”

これから栽培を始める方、あるいはすでに挑戦の道を歩んでいる方にとって、本記事が現場で役立つ「ヒント」となることを願っています。