糖度、技術、ネオマスカットの悲劇

みなさんは、1本のブドウの木から収穫できる実の数を知ってますか。

一般的には、1本のブドウの木から数百房、品種によっては1000房程度の実が収穫できると言われています。

しかし、1本のブドウの木に一定以上の実をつけると、果実に必要な栄養素が足りずに味が落ちてしまいます。

また栄養が行き渡らずに、病気や害虫の発生リスクが高まってしまうため、ブドウ農家は一定の量の実をつけるよう日々管理しています。

 

”ネオマスカット”から教わったこと

以前「ネオマスカット」というブドウ品種が広く流行したことは、記憶に新しいのではないでしょうか。

ネオマスカットは、1995年に新潟県農業研究センターで品種改良され、その後、全国的に広まったブドウ品種の一つです。

しかし、栽培の過程で「糖度が安定しない」という問題がありました。

これは、1本のブドウから多くの実を収穫した事が理由の一つとしてあり、結果ネオマスカットの衰退につながったことに大きく関係していると言われています。

山梨県では、青果物の出荷に関する規格を統一することで、商品の品質向上や公正な取引、山梨県の農産物ブランドの価値向上を目指しています。

通常のシャインマスカットの糖度は15度〜17度ほどが一般的ですが、山梨県のシャインマスカットは、糖度の基準が18度以上と定められており、ネオマスカットの15度以上の基準に比べると、非常に高めです。

シャインマスカットを栽培する私たちにとって、先人たちの教えは大変貴重なものです。

ネオマスカットの栽培で気づいた課題を元に、私たち農家は、自然の循環に合わせて作物を栽培する大切さを忘れてはいけないと思っています。

1本の木に無理をさせず、長年培われた知識と技術を守りながら今後も美味しいシャインマスカットの栽培を続けていきたいと思っています。