――地域とともに持続可能な農業を築くために
日本各地で人気が高まるシャインマスカット。高い糖度と爽やかな香り、皮ごと食べられる手軽さが評価され、国内外からの需要は年々増加しています。一方で、栽培には初期投資・栽培管理・労力が必要で、「始めたいけれどハードルが高い」と感じる新規就農者も少なくありません。
そんな挑戦者の背中を押してくれるのが、各種助成金・補助金制度の存在です。この記事では、マスカット栽培を志す方に向けて、使える制度や支援の最新動向を紹介します。
「支援を活用すること」も、ひとつの技術
果樹栽培、とくにマスカットのような高付加価値作物では、設備投資・棚設置・苗木購入・防除設備などにかかる初期費用が非常に大きくなります。さらに、初収穫までに数年かかるため、収益化までの“助走期間”をどう乗り切るかが鍵となります。
OGINO VINEYARD代表・荻野幸之助さんも、過去に複数の支援制度を活用してきた経験からこう語ります。
「『農業は自己資金だけでやるもの』というイメージがまだ根強い。でも、国や自治体が“挑戦を歓迎している”今こそ、制度を味方につけるべき。それは決して甘えではなく、持続可能な農業をつくるための戦略です」
マスカット栽培に活用できる主な支援制度
以下に、全国で利用可能な代表的な補助金・助成制度をピックアップしてご紹介します。各自治体の独自支援も多数あるため、居住地や就農予定地の役場・農業委員会への確認も忘れずに。
①【農林水産省】経営継続補助金
対象:農業経営体全般
概要:設備投資・省力化・感染症対策・新分野進出への支援
補助率:定額または1/2~3/4
マスカット栽培での活用例:ハウス整備・潅水装置導入・選果場の効率化など
②【全国】農業次世代人材投資資金(準備型・経営開始型)
対象:新規就農予定者(原則45歳未満)
概要:研修中や独立就農直後の生活支援として給付
支給額:年間最大150万円(最長5年)
マスカット栽培での活用例:研修中の生活費支援、定植初年度の生活安定に
✅ OGINO VINEYARDでも、地域の若手農家がこの制度を利用し、露地栽培のマスカットに挑戦しています。
③【都道府県・市町村独自】果樹振興補助金・施設導入助成
対象:県・市町村により異なる
概要:果樹生産の強化を目的とした棚設置・苗木購入・防除機器の補助
補助率:1/2程度が多い(上限あり)
山梨県や長野県など果樹栽培が盛んな地域では、シャインマスカットに特化した支援制度を設けている自治体も存在します。苗木1本あたり数千円の補助、ブドウ棚の建設に対する助成など、細やかな支援が受けられる可能性があります。
④【6次産業化推進】農山漁村振興交付金
対象:農業経営体・農業法人・協同組合など
概要:加工・販売等を含めた6次産業化を支援
補助内容:加工施設整備・ブランド化費用・販路開拓など
OGINO VINEYARDのように、「果実+体験+商品開発」を組み合わせた事業モデルでは、この制度が非常に有効です。
⑤【日本政策金融公庫】農業融資(スーパーL資金など)
対象:農業を営む個人・法人
概要:農地取得・機械導入・施設整備への低金利長期融資
返済期間:最長25年/据置最大5年
特徴:新規就農者向け特例や実績に応じた無担保化もあり
助成金とあわせて“借りる”という選択肢も大切です。
OGINO VINEYARDでも、初期の圃場整備では長期融資を組み合わせることで、収支のバランスを確保しています。
支援制度を上手に使うための3つの視点
助成金や補助金は、「出せば受け取れる」ものではありません。制度の仕組みを理解し、戦略的に活用することが求められます。
1. 地域に根ざす計画性
「どこで、何を、どう育てるか」は支援制度の判断材料になります。
地域の特産としての栽培意義や、他の農業者との協業体制があると、採択率が高まります。
📍OGINO VINEYARDでは、ワイン用ブドウや観光連携も含めた“地域資源活用”としての説明で信頼を獲得。
2. ストーリー性と持続性
制度を申請する際には、「なぜこの作物を選び、どう続けていくのか」を明確に伝える必要があります。
情熱だけでなく、事業性・収支計画・リスク対策なども示すことで、説得力が増します。
3. 地域パートナーとの連携
自治体・JA・農業委員会・先輩農家との“情報ネットワーク”は最大の財産です。
補助金情報を得るだけでなく、書類の添削や実績の共有など、日頃からの関係づくりが成功への近道です。
まとめ|制度は「挑戦者の味方」になる
マスカット栽培に限らず、これからの農業は“自己完結”ではなく、“周囲とつながりながら挑戦する時代”です。
助成金や補助金は、単なる資金援助ではなく、社会全体が挑戦する人を支えるためのインフラです。
OGINO VINEYARDのように、志を持って地に足をつけた栽培を続けていれば、制度は必ずあなたの背中を押してくれます。
夢を諦めず、まずは地域の窓口へ足を運んでみてください。
マスカットの一粒が、地域の未来と経済を実らせる日も、きっと遠くはありません。