――果実の価値を“地域の未来”へつなぐOGINO VINEYARDの取り組み

シャインマスカットをはじめとする高品質ブドウは、いまや日本の果実を象徴する存在です。美しく輝く果皮、芳醇な香り、皮ごと食べられる手軽さ。全国的な人気とともに、輸出やギフト需要も伸び続けています。

しかし、こうした市場成長の陰で、「地域との結びつき」や「地元での消費」は、どれほど意識されているでしょうか?
本記事では、OGINO VINEYARDの実践をもとに、マスカット栽培を“地域の力”へとつなげていくための地産地消の視点と挑戦に迫ります。

なぜ「地産地消」が、いま重要なのか?
「地産地消」とは、地域で生産された農産物を、その地域で消費・活用すること。
食料自給率の向上、輸送エネルギー削減、地域経済の循環など、持続可能な社会づくりの鍵として注目されています。

一方で、マスカットのような高級果実は、贈答用・観光需要・都市部への出荷に偏る傾向があります。

「せっかく地域で大切に育てた果物が、地元ではなかなか食べられない。そんな声を聞くたびに、“地域の誇り”としての果実の役割を見直すべきだと感じるんです」
――OGINO VINEYARD代表 荻野幸之助さん

地元の食卓に届く果物は、単なる「商品」ではありません。
それは土地の風景や人の営みを伝える“物語ある食材”なのです。

マスカットを“地域資源”として活かすには?
OGINO VINEYARDでは、単に高品質な果実を生産・出荷するだけでなく、地域内での活用・循環にも力を入れています。その取り組みをいくつか紹介します。

1. 地元飲食店とのコラボレーション
マスカットを使用したスイーツやドリンクを、地元のカフェやレストランと共同開発。
収穫時期に合わせて期間限定メニューとして提供することで、地元で“旬”を楽しむ文化を醸成しています。

例:シャインマスカットのレアチーズケーキ/スパークリングジュース/ジェラート など

2. 小学校・保育園での食育活動
地元の小学校・保育園にマスカットを提供し、**「自分たちの地域で採れる果物」**を体験してもらう機会を創出。
収穫の裏側や栽培工程を伝えることで、農業への理解・関心も高まります。

荻野さん:「子どもたちが“このマスカット、うちの町で採れたんだ!”と誇りを持つようになる。それが次の担い手につながる第一歩だと思っています」

3. 観光農園・体験型プログラムの提供
畑を開放し、収穫体験・テイスティング・農業体験などを企画。
地域内外の人々が「五感でマスカットに触れる」ことで、地元農業との距離を縮めるきっかけになります。

これにより、一次産業に観光・教育・食文化といった新たな接点が生まれ、「地域で育て、地域で楽しむ」という循環が育ちます。

地産地消がもたらす地域経済への波及効果
マスカット栽培が地域の中で消費・活用されることで、様々な波及効果が生まれます。

領域    波及効果の例
観光     フルーツ狩り・農園カフェ・イベント開催による来訪者増
飲食・加工業  スイーツ、ワイン、ジュースなどの地元ブランド創出
教育・文化 学校連携・農業体験・郷土学習への活用
雇用創出    加工・販売・接客など非農業分野にも雇用機会が拡大

これらの流れは、**地域内でお金・人材・価値が巡る“経済の地産地消”**とも言えるでしょう。

地域全体で果実の価値を高めるということ
マスカットという作物は、それだけで人を惹きつける力を持っています。
だからこそ、“単なる農産物”としてだけではなく、地域の魅力や個性を伝える「顔」として活用すべきです。

OGINO VINEYARDでは、地域の他農家や事業者とも連携し、「甲州市のフルーツ文化」を共有・発信する取り組みを続けています。

荻野さん:「地元の人が、自分たちの作ったものに誇りを持つ。それが本当の意味での“ブランド化”なんだと思います」

今後の課題と展望
もちろん、地産地消の道は一筋縄ではいきません。価格の維持、流通網の確保、農福連携、後継者育成――。
解決すべき課題は多くあります。

しかし、“地域でつくり、地域で楽しみ、地域で価値を生む”という流れを少しずつ実現することで、マスカットは「地域の誇り」として根を下ろし、次世代に受け継がれていくはずです。

まとめ|地元で咲かせる“マスカットという文化”
マスカット栽培は、単に果実を生産する営みではありません。
それは、地域とともに育ち、地域を元気にし、人と人をつなぐ**“文化の種まき”**でもあるのです。

OGINO VINEYARDが実践する地産地消の取り組みは、未来の農業にとってのひとつのヒントとなるはず。
地元の子どもたちが、「うちの町には、こんなおいしいマスカットがある」と誇らしく語れる地域へ。

マスカットの一粒が、“地域の力”になる未来は、もう始まっています。