~気候変動と地域社会に応える果実づくりの未来~

変わる農業の時代、選ばれるマスカット
地球温暖化、耕作放棄地の増加、農業従事者の高齢化。農業の現場は今、大きな転換期を迎えています。そんななか、「何を育てるか」「どう育てるか」を見直す生産者が増えています。その選択肢の一つに、あらためて注目されているのが“マスカット”です。

とくにOGINO VINEYARDが生産するマスカット・オブ・アレキサンドリアは、香り高く、繊細で気品に満ちた果実として国内外にファンを持ちます。実はこのマスカット、今の時代だからこそ、あえて「新しく始める意味」がある果樹でもあるのです。

持続可能な農業を実現する「棚栽培」の可能性
マスカット栽培は一般的に棚栽培(雨よけハウス)で行われます。この仕立て方は、近年の異常気象—たとえば突風や大雨、日照り、猛暑—にも比較的強いという特長があります。

また、棚栽培は風通しや日当たりを自在にコントロールできるため、病害虫のリスクを軽減でき、薬剤の使用を最小限に抑えた栽培も可能になります。これは環境負荷の軽減に直結し、持続可能な農業の実現に貢献します。

その上で、マスカットは1本の樹に数十房の果実を実らせる高収量型の果樹でありながら、適切に仕立てれば1本あたりの管理面積も限られ、省スペースでの展開も可能です。新規参入者にとって大きな障壁となりがちな“広大な農地”を必要としない点も、今の時代におけるメリットでしょう。

地域ブランドを支える果実
OGINO VINEYARDが取り組むマスカット・オブ・アレキサンドリアは、岡山が誇る“果実の女王”とも呼ばれ、日本国内ではその高級感と希少性で名を馳せています。この果実は単なる生産物ではなく、「地域ブランド」そのものでもあります。

高品質なマスカットは、観光農園や直売所を中心とした6次産業化との相性も良く、地域に雇用と交流を生み出す力を秘めています。例えばOGINO VINEYARDが展開する「PIEMO VERITA(ピエモヴェリータ)」のように、ブドウ栽培から商品開発・販売まで一貫して行うスタイルは、農業の新しい価値創出の好例です。

つまり、マスカット生産は「地域経済を牽引する起点」にもなりうる存在なのです。

気候と対話し、時代とともに育てる
もちろん、マスカット栽培には細やかな管理と経験が求められます。果実がデリケートなぶん、摘粒や房づくり、収穫時期の見極めには確かな技術と感性が必要です。しかしこの「手間」は同時に「価値」に直結します。

技術を学び、地域の知見を活かし、地道に積み重ねることで、自身のブランドを築いていく。それができる作物こそが、マスカットなのです。

また、最近では若い担い手や異業種からの参入者によるマスカット栽培の動きも広がっています。OGINO VINEYARDもその一つであり、農業経験の浅い状態から果実の美味しさと誠実な取り組みによって信頼を築いてきた存在です。

消費者ニーズと共鳴するマスカットの魅力
現代の消費者は、単なる“果物の美味しさ”だけでなく、「どこで、誰が、どのように作ったか」というストーリーに価値を感じています。マスカットはその芳醇な香りや美しい見た目、希少性といった物理的な魅力だけでなく、「作り手のこだわり」が表現しやすい果実でもあります。

例えば、樹上完熟へのこだわりや、糖度と酸味のバランスを見極める収穫タイミング。房の形や粒の揃いを美しく整える作業。そして、OGINO VINEYARDが貫いてきた「丁寧に、誠実に育てる」という姿勢。その一つひとつが、消費者に届き、感動を生みます。

これからの農業は、消費者と生産者がもっと近づく“共感の時代”。マスカットは、その架け橋としてぴったりの存在なのです。

マスカット生産を始める人へ—意義と未来
農業の未来を考えたとき、「稼げるかどうか」だけではなく、「地域とつながれるか」「持続可能か」「誰かに必要とされるか」という視点が求められます。

そのすべてにおいて、マスカットは可能性を持った果実です。
そしてOGINO VINEYARDのように、「誰かに贈りたくなる一房」を真摯に届け続ける姿勢は、新たに歩み始める生産者にとって、道標となるでしょう。

これからの時代にマスカットを選ぶことは、ただの作物選びではありません。
それは「人と地域、自然と未来に誠実に向き合う」という、生産者としての意思表明なのです。