ヒント1|“育てたい”より“続けたい”を重視する
マスカット栽培を始める前に、「数年後、自分はこの作業を続けていられるだろうか?」という問いを持つことはとても大切です。

栽培初年度は苗木の育成に集中し、2〜3年後にようやく初収穫。そして収益化はそれ以降。収穫までの期間にも、剪定・誘引・摘粒・病害管理・袋かけ・収穫など、多くの工程があります。

継続のためのポイント
小規模からスタートし、手をかけられる本数に留める

作業スケジュールを前年度から逆算して整理する

自分だけで抱え込まず、家族・地域・仲間の協力を得る

農業は“孤独な戦い”ではありません。だからこそ、続けられる形を考えることが、最初のヒントです。

ヒント2|最初の一歩は“土”を見ることから
シャインマスカットは、土の状態に非常に敏感です。

「果樹に合った土地かどうか」を見極めることは、苗を植える前に必ず取り組むべき重要な準備。排水性の悪い土地、硬すぎる土、酸性に傾いた土壌では、思うように木が育ちません。

基本のチェックポイント
土壌診断でpHや塩基バランスを確認(理想はpH6.0〜6.5)

水はけが悪い圃場では暗渠や畝上げを検討

有機質(完熟堆肥・腐植)の投入で団粒構造を育てる

土づくりは一朝一夕にはできません。しかし、やればやるほど結果に返ってくる、ぶどうづくりの“最良の投資”です。

ヒント3|“木を育てる”2年間を焦らない
定植から本格的な果実収穫までは、最低でも2〜3年。
この期間を「早く房をつけたい」と焦るのではなく、「強い幹を育てる」ことに集中することが大切です。

OGINO VINEYARDで意識していること
1年目は主幹を真っ直ぐ育て、枝数を最小限に保つ

2年目は棚の骨格となる主枝をしっかり伸ばす

木に無理をさせず、結果母枝(来年の実をつける枝)を大切に

健全な木づくりは、次の10年の基礎になります。2年目でうまく伸びなかったら、3年目でやり直せばいい。果樹栽培は“長い目”で見ることが、最大の近道です。

ヒント4|「摘粒」が房の質を決める
摘粒はマスカット栽培における最重要工程のひとつ。
どれだけ元気な木でも、房づくりが適当だと美しい形にはなりません。シャインマスカットは、粒の大きさ・房形・着色・糖度すべてが市場で評価されるため、摘粒作業が品質を大きく左右します。

具体的なコツ
開花前後に行う「1次摘粒」と「2次摘粒」を計画的に

粒の間隔は10〜12mmを目安に。粒と粒がぶつからないこと

見た目ではなく「果梗の強さ」を見て粒を残す

経験がものを言う作業ですが、繰り返すことで“自分の感覚”が磨かれます。数をこなして“手が覚える”ことが成功への鍵です。

ヒント5|“売ること”は“育てること”と同じくらい重要
高品質のシャインマスカットを育てても、売り方が曖昧では収益にはつながりません。栽培と並行して、「誰に届けたいか」「どんな価格帯で出すか」を考えておくことが大切です。

市場戦略の基本
地域直売/ふるさと納税/ECサイト/高級ギフト など複数ルートを想定

同じ品種でも“収穫タイミング”で価値が変わる

「ストーリー」を語れる果樹園は強い

OGINO VINEYARDでも、ただ果物を出荷するのではなく、「栽培背景・育て手・畑の個性」を伝えることで、リピーターが増えていきました。

ヒント6|“人とつながる”ことで知識が広がる
農業は「自分の畑の中だけで完結しない」仕事です。
隣の畑がどうしているか、他の地域で何が流行っているか、苗木はどこで買われているか――情報の質と量が、数年後の成果に直結します。

情報収集のコツ
地域の栽培講習会、農協、普及所に足を運ぶ

SNSで他の生産者とつながり、リアルな作業例を学ぶ

OGINO VINEYARDのように、現場での経験を発信する人をフォローする

孤立しないことが、失敗を減らし、栽培への自信につながります。

最後に|一房に込めた想いが、味になる
シャインマスカットは、ただ甘いだけの果物ではありません。
その房ひとつひとつに、手間・時間・観察・判断のすべてが詰まっています。

だからこそ、味には“想い”が表れるのです。
育てた人の姿勢が、見た目にも味にも香りにも、すべてに反映される。

OGINO VINEYARDも、毎年少しずつ挑戦を重ねながら、理想の一房に近づいてきました。
あなたがこれから始めるぶどうづくりも、きっと同じように、自分だけのストーリーを紡いでいくはずです。